Fのさかな17号 2010 秋 楚蟹(ズワイガニ) page 5/40
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能登半島からエフのさかなをお届けいたします。
「いのちを養う四季のスープ」(NHK出版)より 写真:小林庸浩氏辰巳 芳子一九二四年生まれ。料理研究家の草分けだった母・浜子氏のもとで家庭料理を学ぶ。また、宮内庁大膳寮で修業を積んだ加藤正之氏にフランス料理の指導を受け、イタリア、スペインなど西洋料理の研さんも重ねる。父親の介護を通じてスープに開眼し、鎌倉の自宅でスープ教室「スープの会」を主宰する。NPO「良い食材を伝える会」代表理事。「大豆100粒運動を支える会」会長。(NHK出版刊「辰巳芳子 慎みを食卓に?その一例?」より紹介)●主な著書として、辰巳芳子にまなぶ希望をはぐくむ日々の食卓/「手しおにかける食」の提案 別冊太陽/慎みを食卓に?その一例?/いのちを養う四季のスープ/料理歳時記/あなたのために―いのちを支えるスープ/他多数。 おつゆもの、スープの本を書くに至った情熱は、父の八年に及ぶ、言語障害を伴う半身不随の病苦であったと思います。食べものが飲み込みにくくなった父に、8年間毎日スープを作り、病院へ届けました。父も病院で私のスープを心待ちにしていました。 看護しつつ推測した、さまざまな病態。そしていかに一杯のスープが病苦を和らげうるか、また看護、介護を容易なものにするかでありました。点滴で栄養的に心配がないとしても、喜びがありません。舌、喉、胃、腸の飢餓感は救えません。点滴のみで命を繋いでいる病人の方には特別な飢餓感があるのではないでしょうか。離乳食、野菜嫌いの幼児、疲労困憊している人、病人の方々は手作りのスープが飲めるかどうかで、心身のあり方は随分違ってくるように思います。いのちを育むスープは、食べる人にも作る人にも安らぎを与えてくれます。 人が生を受け、いのちを全うするまで、特に終わりを安らかに行かしめる一助となるは、おつゆものと、スープであると確信しております。5 Fのさかな Autumn 2010